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和解について弁護団の意見 


先ほど阿部宣男氏に関する和解の報告をしました。

本日の東京地裁民事36部における和解について
2017年3月28日

弁護団代表 弁護士 渡 邉 彰 悟

 本日,東京地方裁判所民事36部において,原告阿部宣男と被告板橋区との間で和解が成立した。
 阿部氏が懲戒免職処分を受けたのは平成26年3月28日であり,提訴は同年6月5日,処分日からちょうど3年をかけて,処分は取り消され,原告の名誉は回復されたと考えているところである。
 その和解内容の意義について以下明らかにしておく。

1.全面的に阿部氏の主張が認められた勝訴的和解勧告であること
平成26年3月28日付懲戒免職処分(以下「本件処分」)の取消を訴えた本件訴訟では,①本件処分の取消に加え,②退職金の満額支給,さらに③解決金の支払いという元板橋区職員(以下「阿部氏」)の請求をほぼ全面的に認める裁判所からの和解勧告がなされ,板橋区もこれを受け入れざるを得ない状況に至った。
もとより,行政庁の懲戒処分の判断には一定の裁量が認められており,行政庁による懲戒処分が裁判で違法として取消の対象となることは極めて例外的で,懲戒処分が事実に基づかない場合等に限られるとされる。懲戒処分取消を前提とした本件和解勧告は異例の事態であり,単に量定が重かったという問題として捉えられているものではない。
阿部氏は,処分理由とされた非違行為の成立を徹底的に争い,処分に至る異常な経緯,前提となる事実の誤認,手続違反等を主張した。この和解勧告は,裁判所が,事実上阿部氏の主張をほぼ認める一方,板橋区の主張を排斥したもので,阿部氏にとって完全勝訴に等しいものである。また,板橋区は阿部氏によりホタル飼育がなされてきたことについても認めている。
なお,議案第23号「3和解の内容について(6)」の処分理由中の非違行為の一部容認は,書類作成にあたり上司の了解を経てはいたものの,区の正式な手続に則った決裁を経ていなかったという事務処理上の手続的な瑕疵を受容したにすぎない。全面的に非違行為が認められるのであれば,処分取消の和解勧告がなされるはずがなく,(6)は事務処理上の軽微な手続き的瑕疵を意味するものである。
2.板橋区の主張が客観的資料から乖離していたこと
和解勧告が提示された理由として,板橋区の主張が過去の記録資料から大きく乖離していたことが挙げられる。板橋区は本件処分を正当化する前提として,あたかも阿部氏が常時“独断”で動き,“個人的な活動”を板橋区の業務として行っていた旨主張してきた。しかし,阿部氏は日々上司との間でFAX,電話等でやり取りしていた他,板橋区からの要請により,①「ホタル環境館管理日誌」(資料1),②「業務実績報告書」(資料2)を提出していた。むしろ,阿部氏が毎月板橋区に対して,他の自治体等への訪問日時,場所,対処内容等を含めた日々の業務を報告し,複数名の板橋区職員がこれを毎回確認し捺印するなどしていたことが明らかになった。さらに,③「板橋区の議会議事録」では,当時の資源環境部長が,ホタルの累代飼育の特許技術を高く評価し,無償でホタル再生事業が行われた箇所を複数取り上げて説明していることからも(資料3),過去に,ホタル再生事業が無償で行われていたことは板橋区内でも認識されていたことが明らかとなった。クロマルハナバチに関する事業に関しても同様に区の公認のもとで動いていたことも明らかであった。
 このように,客観的資料からは,板橋区が阿部氏の行動を認識し承認していたことが読み取れたのであり,この理解と認識が裁判所においても共有されたのである。

3.本件は,結論ありきの不当な懲戒処分だったこと
  さらに,本件訴訟で明らかになったのは,本件処分に至る異常な経過である。処分説明書は,当初想定されていた内容とは大きく異なっていた。本件処分は初めから結論ありきだったのである。
当時の資源環境部山崎部長・井上課長(以下も当時の役職で記す)の当初の動きは,阿部氏を刑事事件によって陥れようとするものであった。
平成25年8月にむし企画の訴外高久氏への一方的な事情聴取が実施され,これを受けて,平成25年9月26日,山崎部長は「事故報告について」と題する文書を作成した。もちろん,対象者は阿部氏である。行政情報開示によって取得した文書は黒塗りで内容が不詳であるが,「参考事項」として「司法警察機関との関わり」というところに記述がある(その内容を山崎氏は法廷で"忘れた"と証言した)。
つまり,山崎部長・井上課長は,阿部氏を刑事上の問題で免職に陥れるつもりだった。刑事事件に結び付けようとしていた事実関係としては,①むし企画の受託料を阿部氏が正当の理由なく取得(詐欺/収賄等),②ホタル館で飼育していたクロマルハナバチを対外的に売却(区の所有物の横領),③ホタル再生事業に伴う不正な利益の取得(背任)等が,審理の過程で浮かびあがった。しかし,これらの事実はいずれも認定できない架空の事実であった。そのため,処分理由には反映されず,処分説明書には「刑事事件との関係」は「なし」とされた。
通常,事故報告がなされた場合,区長が速やかに監察命令をださなければならないが,本件では監察命令は事故報告から4か月が経過した平成26年1月30日になされている(別紙経過表参照)。これは1月27日の「ホタル生息調査」(その内容はホタルの生息調査の名に値しないものであった *1 )の3日後である (*2) 。この「ホタル生息調査」でホタルが飼育されていないという印象を植え付け *3 *4,さらには,阿部氏があたかも警察問題を抱えているかの印象を作り上げて(山崎・井上両氏は議会で警察の捜査が継続していることを繰り返し議会において答弁していた *5 ),最終的に懲戒免職に結び付けたのである。
しかも,山崎・井上両氏が阿部氏の問題で相談を持ち掛けていた伊達弁護士は,懲戒分限審査委員会の委員の一人で,外部委員でもあった。委員として公正さを要求される弁護士が事前に懲戒対象者の消極的情報を受けていたことになる。このような点でも不公正さが際立っている。
以上の点も法廷で浮き彫りになり,処分説明書の事実が認定できないからこそ,裁判所は和解勧告をしたものである。

4.被告作成の「ホタル生態環境館に関する検証報告書」(平成29年2月作成)の根本的な誤り
板橋区は和解内容の審議の前にこの検証報告書を作成した。本報告書は「ホタル生態環境館における事故に関しては阿部氏に起因しているとはいえ,事故を惹起させることになった管理監督の実施も含め明らかにする必要がある」とする。本報告書は,議案第23号3(6)の非違行為の一部容認が,あたかも処分説明書のすべての事項に及ぶことを前提とし,懲戒免職処分に至った経過及びその内容の誤りについて一言も触れることなくまとめられている。
しかしながら,和解勧告は,本件処分が根本的に誤っていたということを前提とする。板橋区の姿勢はその本質を歪め,見誤らせるものであり,和解案を受諾しながら,かかる文書を作成し,原告や区民を欺く態度に出たことは,極めて不誠実であり阿部氏としても到底容認できないものである。
なぜ山崎・井上両氏が,根拠のない処分理由で阿部氏を懲戒免職に陥れようとしたのかが今こそ問われるべきである。なぜ,刑事事件に結び付けて処分理由を作出しようとしたのか?なぜ,飼育の実態がないかのような外観を作りだし,さらに,警察が動いているとの印象操作にまでおよび,懲戒分限審査委員会の外部委員まで巻き込み免職処分に持ち込んだのか?そのことが問われなければならない。今後の板橋区の取り組みを見守りたい。
本報告書の最後には「全庁一丸となって再発防止に取り組み区政の信頼回復に向け全力を傾注してことを固く誓うものである」とあるが,この再発防止が阿部氏の行為を前提にするものであれば何の意味もない。再発防止をいうのであれば,まさに今回の懲戒免職処分にまで至った誤りとその原因を確認し,今回のような誤った処分をなしたことの再発防止のために何をなすべきかということこそが問われているのである。         
以上

*1 調査を受託した会社と,むし企画解除後の受託会社は同一の「自然環境研究センター」で,しかも同社が随意契約で参入することは調査段階で決定していたという事実は,不自然であって公正さを欠いたものとみざるを得ない。
*2 9月26日の事故報告書を起点とする手続きは極めて不明瞭である。板橋区服務監察規程9条1項で事故報告がなされると,同2項で区長による監察命令がなされ,その後,「措置意見書」が区長に報告され(10条),関係部長に「必要な措置」(11条)が命じられる。しかし,情報開示によっても10条・11条の文書は存在しないとされている。
*3 処分後に作成された「板橋区ホタル生態環境館のホタル等生息調査結果と元飼育担当職員の報告数との乖離について」(平成27年1月,以下「乖離報告書」)も同じ文脈で作成されているが,飼育実態については,処分理由に挙がらず,裁判の争点にもならなかったものの,正当性の背景事実として利用されていた。
*4 「乖離報告書」については,乖離の主な根拠に対して,①掲載されている写真はホタル持ち込みの直接的な証拠ではないことを井上課長も認めており,②持ち込みの証拠として使われた主な配送伝票も8月15日のもので,夜間鑑賞会後の日付で証拠足り得ないこと,③DNAについては,被告が別件において,懲戒免職処分後に外部からホタルが持ち込まれた可能性を認めたため,なんら客観性のないことが明らかとなった。
*5 ⑴ H26.2.19区民環境委員会 ⑵ 同3.10 予算審査特別委員会 区民環境分科会 ⑶ 同3.20 予算審査特別委員会等,いずれも懲戒免職処分前の議事である。
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