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ゲンジボタルの発光パターンについて(生物地理学会原著論文) 

「ゲンジボタルの発光パターンに及ぼす温度環境り影響」
-地理的差異による2型分布に対する考察として-

日本生物地理学会 第59巻第2004年12月20日 

阿部宣男1・3,稲垣照美1,石川秀之1,安達政伸1,干場英弘2 
1〒316-8511日立市中成沢4-12-1 茨城大学大学院理工学研究科
2〒175-8571東京都板橋区高島平1-9-1 大東文化大学第一高等学校
3〒175-8571東京都板橋区高島平4-21-1板橋区ホタル飼育施設


 ホタルの発光パターンは,雌雄間のコミュニケーションの手段として知られている.日本に生息するゲンジボタルにおいて,その発光パターンは,現在2つのタイプとその中間型の存在が報告されている(Ohba, 1984; 大場信義,1988).すなわち,西日本に生息する2秒間隔で発光するタイプ,東日本に生息する4秒間隔で発光するタイプ,およびその境界地域に見られる3秒間隔で発光するタイプである.近年,この地域による発光パターンの相違を遺伝子レベルで確認する試みがなされ,ミトコンドリアCOⅡ遺伝子の各地域における相違が調査されてきた(鈴木, 1999; Suzuki, 2002).その結果,発光パターンの地域性と矛盾しない見解が出ているが,地域によるばらつきもあり,また上記遺伝子は発光を調節する遺伝子とは独立しているため,遺伝子解析による発光パターンの地域性解明とは直接に結びつかないと考えられる.
我々は,ゲンジボタルの光のゆらぎと人の感性を分析する過程(稲垣ほか, 2001; 阿部ほか, 2003a; 阿部ほか, 2003b)で,上記2種の発光パターンを識別することが難しいという事実に遭遇した.したがって,本研究では,統計解析や画像解析を援用して,ホタルの発光パターンがその生息環境,特に温熱環境から受ける影響を実験的に明らかにすることにした.

Abstract: The effects of ambience temperature environment on the light emission pattern of Genji firefly, Luciola cruciata, are examined in the present study. We gave a consideration to the common theory that claims the existence of two main geologically distributing types of the fireflies, such as the West-Japanese, 2 seconds flash type and the East-Japanese, 4 seconds flash type. The light emission pattern of the fireflies become short toward the high temperature around 25℃ and long under the low temperature toward 15℃, regardless of their geological backgrounds.
Keywords: Genji firefly, Light emission pattern, Temperature environment


材料と計測方法

 材料 研究対象であるゲンジボタル(Luciola cruciata Motschulsky, 1854)は,東京都板橋区立エコポリスセンターホタル飼育施設(以下,ホタル飼育施設)で累代飼育している個体(1989年に福島県大熊町から移入)の他,秋田県本荘市,徳島県阿波池田町,福岡県北九州市のそれぞれの地域からホタル飼育施設に成虫を輸送したものである.比較として測定したヘイケボタル(Luciola lateralis Motschulsky, 1860)は,栃木県栗山村から1989年にホタル飼育施設に導入し,累代飼育をしているものである.
計測方法 ここでは,図1に示したようなアクリル製シャーレ(幅 20 cm,高さ 20 cm)にそれぞれのホタル(雌雄混合)を入れ,ベンチレータで,温度を 15℃から 25℃まで温度を上昇させその後, 25℃から 15℃まで温度を下降させた時(以下,“上昇下降測定”とする)と,この逆の温度変化,すなわち 25℃から 15℃まで温度を下降させその後,再び 25℃まで温度を上昇させた時(以下,“下降上昇測定”とする)のホタルの発光パターン(明滅間隔の変化)を撮影・測定し,各温度での明滅間隔の平均と信頼区間を求めた.このアクリル製シャーレ内は,6つの小部屋に独立して分割され,雌雄の組み合わせ匹数は,常時 1:5 である.したがって,雌雄を区別して計測を行うことができる.なお,湿度は,いずれも 80~95%の条件下で調査した.
ゲンジボタルの撮影は,6月上旬から下旬にかけて,ヘイケボタルの撮影は7月中旬から下旬にかけて,ホタル飼育施設において行った.撮影には,デジタルビデオカメラ(シャープ製VL-PD7, 京セラ製DV-L200)を用い,カメラは照射を弱めた赤外線暗視モード(ナイトショット)に設定した.時間分解能は, 1/30 secである.なお,正確な輝度データ採取の妨げとなり得るビデオカメラの自動機能は作動しないよう予め設定した.すなわち,ホタルの明滅に伴う自動露出補正機能の誤作動が生じないようホワイトバランスを固定し,また暗闇においてはオートフォーカスが正確に機能しないことから手動焦点調節に切り換え,パンフォーカス撮影とした.以上の工夫により,ホタルの淡い光の明滅を正確に撮影することが可能となった.なお,一連の計測では,湿度も同時に計測した.
画像処理法 ゲンジボタルあるいはヘイケボタルの明滅の一連の動画像を,動画像処理ボードを介してコンピューターに取り込んだ.この際,動画像の時間分解能が 30 frame/secであることから,サンプリング周波数を30 Hzとし,総数 1024 frame(時間にして 34.1 sec間)の画像を取り込んだ.この計測条件は,ホタルの明滅持続時間による生態的な要因を考慮したものである.次に,コンピューターに取り込んだ動画像は,画像濃度変位量解析システム((株)ライブラリー製, Gray-val32)により画像処理し,発光パターンの輝度変動に関する時系列データを構築した.その後,得られた時系列データから発光パターンの明滅間隔を測定し,温度上昇時と下降時の各温度での平均と信頼区間を求める.この時,信頼区間は 95%とした.すなわち,ホタルの発光パターンの時間変動を図2に示すように定義した.発光の発生時間をt1,t2,t3,…,tnとし,その差から明滅間隔i1,i2,i3,…,in を求める.なお一連の明滅間隔の測定には,比較的明滅の区別が明確な映像を用い,データ数を 1024 frameとした.
ホタルの発光にはフラッシュ発光,刺激弱光,微光,飛翔時の発光(矢島, 1978; Ohba, 1983)などいくつかの様式が報告されているが,これら調査では小型のアクリル容器と言う閉鎖環境での調査であったため,容器内で雌雄が発光したすべてのパターンを一括して対象とし,温熱環境の変遷や地理的偏差がホタルの明滅間隔に及ぼす全体の傾向を調査するに至っていない.

結果及び考察

 ゲンジボタルの温度変化 図3は,板橋区ホタル飼育施設で採取したゲンジボタル(雌雄混合)をベンチレータに入れ,上昇下降測定を行った時の明滅間隔の変化をまとめたものである. 25℃時はほぼ 1.5 sec周期で明滅し, 15℃時は 2.0~2.7 sec周期で明滅した.図4は,下降上昇測定の結果を示したものである. 15℃時は 3.5~3.6 sec周期で明滅し, 25℃時は 1.9~3.5 sec周期で明滅した.
図5は,徳島県池田町で採取した西日本型のゲンジボタル(雌雄混合)をベンチレータに入れ,上昇下降測定を行った結果を示したものである. 25℃時はほぼ 1.6 sec周期で明滅し, 15℃時はほぼ 2.5~3.5 sec 周期で明滅した.図6は,このホタルを下降上昇測したものである. 25℃時は 1.6~2.3 sec周期で明滅し, 15℃時は約 3.4 sec周期で明滅した.
図7は,北九州で採取した西日本型のゲンジボタル(雌雄混合)をベンチレータに入れ,上昇下降測定を行った結果を示したものである. 25℃時はほぼ 2.0 sec周期で明滅し, 15℃時は 2.5~3.8 sec周期で明滅した.図8は,下降上昇測定の結果を示したものである. 15℃時は 3.6~4.1 sec周期で明滅し, 25℃時は 1.7~1.9 sec周期で明滅していることがわかる.
図9,10は,秋田で採取した東日本型のゲンジボタル(雌雄混合)をベンチレータに入れ,それぞれ,上昇下降測定,下降上昇測定を行った結果を示したものである.前者では, 25℃時はほぼ 1.5 sec 周期で明滅し, 15℃時は 2.8~3.0 sec 周期で明滅した.また,後者では 15℃時は 2.8~3.6 sec 周期で明滅し, 25℃時は 1.7~2.4 sec 周期で明滅した.
以上の結果から,ゲンジボタルは,温度が上昇すると徐々に発光間隔が短くなり,逆に温度が下降すると発光間隔が長くなることが判明した.このことからも,発光パターンは,温熱環境に大きく影響を受けることが判断できる.

 ホタル飼育施設では,上記のホタルの他に,青森県弘前市(東日本型),福岡県北九州市(西日本型)から輸送したゲンジボタルと,施設で飼育しているゲンジボタルをそれぞれ別のプラスチック容器(20 ㎝ × 40 ㎝ × 25 ㎝)に入れて同じ室内(18~21℃に調節)に並べて,同時明滅の発光パターンを観察した.その結果,これら3地域からのホタルは,同じ温度条件下では同調して発光した.また,これらのホタルを同じ容器に入れたところ,交尾も行われ,それぞれの子孫をも残している(阿部ほか,投稿準備中).プラスチック容器内での同時明滅は,野外などでの同時明滅とほぼ同じ現象であると考えられ,発光パターンと温熱環境の変化の関係は,地理的偏差と関連して重要な関係であると考える.
ヘイケボタルの温度変化 図11は,ホタル飼育施設で採取したヘイケボタル(雌雄混合)をベンチレータに入れ,上昇下降測定を行った結果を示したものである. 25℃時は 0.4~1.0 sec 周期で明滅し, 15℃時は 0.9~1.1 sec 周期で明滅した.図12は,下降上昇測定を行った結果である. 15℃時は 0.8~2.3 sec 周期で明滅し, 25℃時はほぼ 0.5 sec 周期で明滅した.この測定において, 15℃時に 0.8~2.3 sec 周期と変化が大きかったのは,観察された個体数が2と少なかったことに起因すると考えられる.しかしながら,ヘイケボタルも,ゲンジボタルと同様に,温度が上昇すると徐々に発光間隔が短くなり,逆に温度が下降すると発光間隔が長くなることから,発光パターンは,温熱環境に大きく影響を受けることがわかる.

ゲンジボタルとヘイケボタルの発光パターンを比較したとき,過去の報告通り(大場, 1979),ヘイケボタルの方が発光間隔は短かった.また,ヘイケボタルにおいては,その発光間隔への温度の影響がゲンジボタルのそれより小さいようである.このことは,ヘイケボタルの方が元々の明滅パターンが早いことに原因しているのであろう.

 発光パターンの温熱環境による変遷 以上の結果から,ホタルの発光パターンは,採集場所や雌雄に関わらず,周囲温度に大きく影響を受けることが示された.ホタルは,温度が上昇すると徐々に発光間隔は短くなり,逆に温度が下降すると発光間隔は長くなることから,発光パターンは温熱環境に大きく影響を受けることが判断できる.また,ホタルの明滅間隔は,温度を上昇させてから下降させた場合と下降させてから上昇させた場合のいずれにおいても,温度を上昇させた時と下降させた時では同一温度でも明滅間隔に差が生じる.すなわち,温度を下降させた時の方が同一温度でも明滅間隔が長くなる傾向にある.

まとめ

 本研究で測定したのは,シャーレという限定空間で測定し,求愛行動に現れる明滅現象とは必ずしも一致していないが,こうした温度の発光パターンへの影響は飛翔時にも現れるものと思われる.このことから,各地でみられる発光間隔の違いは,地域による周囲気温の違いによる可能性がある.一般に自然界では,日没後,温度が下がる傾向にある時に上昇下降条件下で発光するものと考えられる.しかしながら,今回のような比較的短時間の温度変化条件下における実験が,どの程度自然界の現象を再現できているのかに関しては,今後の重要な研究課題である.

謝 辞

本報告を提出するにあたり,故酒井精六博士にご尽力を賜った.深謝の意を表する次第である.

引用文献

阿部宣男・稲垣照美・石川秀之・松井隆文・安久正紘, 2003. ホタルの光と人の感性について「発光現象のゆらぎ特性」. 感性工学研究論文集, 1: 35-44.
阿部宣男・稲垣照美・木村尚美・松井隆文・安久正紘, 2003. ホタルの光と人の感性について「感性情報計測と福祉応用」. 感性工学研究論文集, 3: 41-50.
稲垣照美・犬塚浩二・安久正紘・赤羽秀朗・阿部宣男, 2001. 「ホタルの発光パターンにおける1/fn ゆらぎ現象と癒し効果」. 日本機械学会論文集C編, 67: 365-372.
大場信義, 1979. ホタルの発光パターンと活動習性予報.神奈川県博物館協会会報,41: 1-9.
Ohba, N. 1983. Studies on the communication system of Japanese fireflies. Sci. Rept. Yokosuka City Mus. 30: 1-62, pls. 1-6.
Ohba, N. 1984. Synchronous flashing in the Japanese firefly, Luciola cruciata (Coleoptera: Lampyridae). Sci. Rept. Yokosuka City Mus. 32: 23-33, pl. 8.
Suzuki, H., Sato, Y. & Ohba, N. 2002. Gene diversity and geographic differentiation in mitochondrial DNA of the Genji firefly, Luciola cruciata (Coleoptera: Lampyridae). Mol. Phylogenet Evol. 22:193-205.
大場信義, 1988. ゲンジボタル. 198 pp. 文一総合出版, 東京.
鈴木浩文, 1999. 多摩地域におけるゲンジボタル集団の遺伝的多様性と保全対策. 東京ホタル会議編 26 pp.
矢島稔, 1978. ホタルの日周活動と発光信号-ゲンジボタルの場合. インセクタリウム 15: 12-19.




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